【運動指導の科学】「肘を上げて!」より「ゴールの隅を狙って!」?子どもの運動学習を変える“注意の向け方”
こんにちは!平塚ハンドボールクラブです😊
これまでのシリーズでは、ハンドボールの楽しさや、走る・投げる・跳ぶといった運動の魅力、パスやチームワークについて紹介してきました。実際、ハンドボールでは「投げる」「跳ぶ」「止まる」「相手を見る」「仲間へパスする」など、さまざまな動作を瞬間的に組み合わせます。
では、子どもたちに新しい動きを教えるとき、
「肘をもっと高くして!」
「膝を曲げて!」
「腕を大きく振って!」
と身体の動きを細かく教えるのが、一番良い方法なのでしょうか?
実は運動学習の研究では、「どこに注意を向けさせるか」だけで、運動のパフォーマンスや学習効果が変わる可能性があることが長年研究されています。
その代表的な考え方が、今回紹介する
インターナルフォーカスとエクスターナルフォーカスです🧠✨
インターナルフォーカスとは?
インターナルフォーカス(Internal Focus)とは、簡単にいうと、
「自分の身体の動き」に注意を向けること
です。
例えば、ハンドボールのシュートであれば、
「肘を高くする」
「肩をしっかり回す」
「手首を返す」
「膝を曲げる」
といった指示がこれに当たります。
指導者からすると、とても自然な声かけです。
フォームを説明するときには、どうしても身体の部位について話したくなりますよね。
一方で、研究では別の注意の向け方も注目されています。
エクスターナルフォーカスとは?
エクスターナルフォーカス(External Focus)は、
「自分の身体ではなく、自分の動きによって外の世界に起こる結果」に注意を向ける方法
です。
例えばシュートなら、
「ゴール右上にボールを突き刺そう!」
「キーパーの手が届かないところへ飛ばそう!」
「ボールをまっすぐターゲットに飛ばそう!」
といった声かけです。
パスであれば、
「腕をしっかり振って!」
ではなく、
「仲間の胸に速いボールを届けよう!」
と伝えます。
同じ動きを教えているのですが、子どもが意識する対象が変わります。
ここが非常に重要なポイントです💡
研究では「外側への注意」が有利とされてきた
この分野では20年以上にわたって多くの研究が行われています。
2021年に発表された大規模なシステマティックレビュー・メタ解析では、運動パフォーマンスについて73研究・1,824人、運動学習について40研究・1,274人分のデータが分析されました。
その結果、身体そのものへ注意を向けるインターナルフォーカスよりも、動作によって生まれる結果へ注意を向けるエクスターナルフォーカスの方が、パフォーマンス・保持・別課題への転移で有利だったと報告されています。【研究①】(PubMed)
さらに筋活動を分析した研究群では、エクスターナルフォーカスの方が、より少ない筋活動で動作を行える可能性も示されました。
つまり、
必要以上に身体をコントロールしようとしないことで、動きが自然にまとまる
可能性が考えられているのです。
なぜ「肘を上げて!」より「ここを狙って!」なのか?
その説明としてよく知られているのが「Constrained Action Hypothesis(制約された動作仮説)」です。
身体の細かな動きを意識しすぎると、
「肘はこれくらい?」
「足はどこ?」
「手首は?」
「肩は?」
と、普段なら無意識に行われている動きを意識的にコントロールしようとしてしまいます。
すると、本来自動的に調整されるはずの運動を自分で“邪魔してしまう”可能性があります。
反対に、
「ボールをあそこへ飛ばす」
という結果へ注意を向けることで、身体が目的達成のために自然と動きを組み立てやすくなる、という考え方です。【研究②】(PubMed)
これはハンドボールにも非常に応用しやすい考え方です🤾♀️
子どもにも効果はあるの?
ここは保護者の皆さまにとって特に気になるところだと思います。
小学生年代を対象にした研究もあります。
8〜12歳の子どもを対象にゴルフのパッティングを学習させた研究では、身体の動きよりも道具の動きへ注意を向けたグループの方が、運動学習の改善が大きかったことが報告されています。【研究③】(PubMed)
また、10〜12歳の子どもがサッカーのスローインを練習した研究でも、身体そのものではなく動作の結果に注意を向けるフィードバックを受けたグループで、学習効果が高かったと報告されています。【研究④】(Frontiers)
一方、162人の8〜12歳を対象とした投球研究では、エクスターナルフォーカスによって練習中の正確性は向上したものの、1週間後の保持テストでは差が確認されなかったという結果もあります。【研究⑤】(PubMed)
つまり、
「エクスターナルフォーカスにすれば必ず上達する」
というほど単純ではありません。
ここはとても大切です。
実は最新研究では「万能ではない」とも指摘されています
これまでの研究ではエクスターナルフォーカスが優れているという結果が多く報告されてきました。
しかし2024年、過去の研究を出版バイアスまで考慮して再分析した研究では、補正後の平均効果はかなり小さくなり、
「エクスターナルフォーカスが常に優れているとは言い切れない」
と指摘されています。【研究⑥】(PubMed)
さらに2026年に発表された87研究を対象としたネットワークメタ解析では、選手の熟練度によっても適した注意の向け方が変わる可能性が報告されています。
特に初心者・初級者では、身体から少し離れた動作結果へ注意を向ける方法が有力だった一方、高い競技レベルになると「リズムよく」「滑らかに」といった動作全体の感覚を意識するホリスティックフォーカスも有力な選択肢になりました。【研究⑦】(PubMed)
科学は「絶対にこの指導法!」ではなく、
その子・その課題・その習熟度に合わせて使い分けることが重要
だと考えた方が良さそうです😊
ハンドボール指導なら、こう言い換えられる!
例えば、こんな違いがあります👇
| 動作 | インターナルフォーカス | エクスターナルフォーカス |
|---|---|---|
| シュート | 「肘を高くしよう」 | 「ゴールの上角へボールを飛ばそう」 |
| パス | 「手首を返そう」 | 「仲間の胸へ速いボールを届けよう」 |
| ジャンプ | 「膝をしっかり曲げよう」 | 「床を強く押して高く跳ぼう」 |
| ディフェンス | 「腰を落とそう」 | 「相手の進むコースを消そう」 |
| ステップ | 「足を素早く動かそう」 | 「マーカーの間を一気に抜けよう」 |
ポイントは、フォームをまったく教えないことではありません。
必要であれば、
「肘を少し上げてみよう」
と短く伝えたうえで、
「じゃあ、その形でゴールの右上を狙ってみよう!」
と最終的な注意をプレーの目的へ戻してあげる。
こうした使い分けは、実際のジュニア年代の指導でも非常に取り入れやすい方法だと考えられます。
「正しいフォーム」より「何を達成するか」を考えられる選手へ
ハンドボールの試合では、
「今、肘は何度くらい曲がっているかな?」
と考える時間はありません。
相手を見て、仲間を見て、スペースを見つけ、キーパーを見て、一瞬で判断してプレーします。
だからこそ練習でも、
身体を完璧に操作することだけではなく、「何をしたいのか」に意識を向ける経験
がとても大切だと考えています。
ハンドボールには正解が一つしかない場面ばかりではありません。
自分で見て、考えて、試してみる。
失敗したらもう一度変えてみる。
その試行錯誤もスポーツの大きな楽しさです😊✨
🎥今回のおすすめハンドボール動画
今回は、U12年代の選手が投球フォームとターゲットへの投げ分けを練習している動画をご紹介します。
まさに今回紹介した「身体の動き」と「ボールをどこへ飛ばすか」を考えるうえで参考になる内容です🤾♂️
親子で「どこを意識して投げているかな?」と話しながら見るのもおすすめです😊
小学生・中学生メンバー募集中です!🤾♀️🤾♂️
平塚ハンドボールクラブでは、小学生・中学生の新しい仲間を募集しています!
ハンドボール経験は問いません。
「ハンドボールをやったことがない」
「運動があまり得意ではない」
「新しいスポーツを始めてみたい」
「もっと本格的にハンドボールをやりたい」
どんなきっかけでも大歓迎です✨
現在も見学・体験を随時受け付けており、初心者から経験者まで参加できます。
ハンドボールには、走る・跳ぶ・投げる楽しさだけではなく、自分で考え、工夫し、仲間と一緒に成長していく面白さがあります。
まずは一度、体育館でハンドボールに触れてみてください😊
📚参考論文・エビデンス
研究①
Superiority of external attentional focus for motor performance and learning: Systematic reviews and meta-analyses
2021年・システマティックレビュー/メタ解析
PubMedで論文を見る
研究②
Directing attention to movement effects enhances learning: a review
PubMedで論文を見る
研究③
Focus of Attention in Children’s Motor Learning: Examining the Role of Age and Working Memory
PubMedで論文を見る
研究④
Frequent external-focus feedback enhances motor learning
PubMedで論文を見る
研究⑤
Motor learning and movement automatization in typically developing children
PubMedで論文を見る
研究⑥
Reporting bias, not external focus: A robust Bayesian meta-analysis and systematic review of the external focus of attention literature
2024年・システマティックレビュー/ベイズメタ解析
PubMedで論文を見る
研究⑦
Reevaluating attentional focus on motor performance according to expertise: A stratified network meta-analysis
2026年・ネットワークメタ解析
PubMedで論文を見る
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