【保護者必見】小学生の熱中症対策を科学で解説🧪|練習前・中・後にできる予防と応急処置
夏になると、スポーツをする子どもの保護者にとって気になるのが「熱中症」です。
「水筒を持たせているから大丈夫」
「体育館だから屋外より安全」
「本人が元気と言っているから問題ない」
そう思いたくなりますが、熱中症は屋外だけでなく、体育館や登下校中にも発生します。また、小学生は自分の体調変化をうまく説明できなかったり、「練習を休みたくない」と不調を隠したりすることもあります。
そのため、小学生の熱中症対策では、子ども本人の注意だけに任せず、保護者と指導者が環境や体調を確認することが重要です。
今回は、研究論文や公的ガイドラインをもとに、家庭やスポーツ現場で実践できる熱中症対策をご紹介します☀️
1.子どもは大人より暑さに弱いの?
以前は「子どもは汗をかく能力が低いため、大人よりも必ず暑さに弱い」と説明されることが多くありました。
しかし、近年の研究では、少し慎重な見方が必要だとされています。
子どもと大人では、発汗量、体格、体表面積などに違いがあります。一方で、運動強度や体格を適切にそろえて比較すると、健康な子どもの体温上昇が大人より著しく大きいとは限らないことが報告されています。
つまり、「子どもだから必ず体温調節ができない」という単純な話ではありません。
それでも小学生には、次のような現実的なリスクがあります。
- のどの渇きや頭痛をうまく説明できない
- 遊びや練習に夢中になると休憩を忘れる
- 周囲に迷惑をかけたくないと我慢する
- 水筒の残量を自分で管理することが難しい
- 練習を休む判断を大人に依存している
そのため、体温調節能力だけでなく、大人が早めに異変を見つけられる仕組みが必要です。
Smallcombe et al., 2025
Notley et al., 2020
2.気温ではなく「WBGT」を確認しましょう
熱中症の危険度を判断するときは、気温だけでは十分ではありません。
重要なのが、暑さ指数とも呼ばれる「WBGT」です。
WBGTは、気温だけでなく、湿度、日射や地面からの熱、風などを考慮した指標です。湿度が高い日は汗が蒸発しにくいため、気温がそれほど高くなくても体内に熱がたまりやすくなります。
日本スポーツ協会の運動指針では、次のような目安が示されています。
| WBGT | 運動時の対応 |
|---|---|
| 21℃未満 | 適宜、水分補給を行う |
| 21~25℃ | 熱中症の兆候に注意し、積極的に水分補給する |
| 25~28℃ | 積極的に休憩する。激しい運動では30分おき程度に休む |
| 28~31℃ | 激しい運動を避ける。暑さに慣れていない子は運動中止を検討する |
| 31℃以上 | 特別な場合を除き運動中止。特に子どもは中止すべき |
大切なのは、地域の予報だけで判断しないことです。
同じ体育館でも、入口付近とコート中央、風通しのよい場所と壁際では環境が異なります。可能であれば、実際に活動する場所でWBGTを測定することが望まれます。
日本スポーツ協会「スポーツ活動中の熱中症予防ガイドブック」
3.練習前に保護者が確認したい5項目
熱中症は、練習中の水分補給だけで防ぐものではありません。
練習前の体調が悪いと、体温を調節する力も低下します。特に、睡眠不足、発熱、風邪、下痢、食欲不振、強い疲労がある日は注意が必要です。
出発前に、次の5項目を確認してみましょう。
練習前チェック
- 昨夜は十分に眠れているか
- 朝食や昼食を食べられているか
- 発熱、頭痛、腹痛、下痢がないか
- いつもより元気や反応が乏しくないか
- 十分な量の飲み物を持っているか
「少し元気がないけれど、行けば治るだろう」と無理をさせないことも立派な熱中症対策です。
体調が悪い日は、休む、見学する、練習時間を短くするなど、早めに調整しましょう。持病がある場合や薬を服用している場合は、暑い環境での運動について事前に医師へ相談することも大切です。
4.暑さには「徐々に慣れる」ことが大切
梅雨明け、連休明け、夏休み明けなど、急に暑くなった時期は特に注意が必要です。
暑い環境での活動を少しずつ繰り返すと、汗をかき始めるタイミングが早くなる、循環への負担が軽くなるなど、身体が暑さに適応していきます。これを「暑熱順化」と呼びます。
研究や小児向けの勧告では、暑い環境での運動量や時間を、一般的に10~14日ほどかけて徐々に増やすことが推奨されています。
初日から長時間の走り込みを行うのではなく、
- 最初の数日は練習時間を短くする
- 強度の高いメニューを減らす
- 休憩回数を増やす
- 防具や厚いウェアの使用時間を段階的に増やす
といった調整が重要です。
実際に、暑熱順化に関するルールを導入した地域では、運動時の熱中症発生率が低下したことが報告されています。
American Academy of Pediatrics, 2011
Kerr et al., 2019
5.水分補給は「のどが渇く前」に仕組み化する
小学生の場合、「自由に飲んでよい」と伝えるだけでは十分に飲まないことがあります。
そのため、練習中は子どもの判断だけに任せず、時間を決めて全員で水分補給をすることが大切です。
基本となる飲み物は水やお茶です。ただし、長時間の運動や大量に汗をかく環境では、水分とともに塩分が失われます。そのような場合は、電解質を含むスポーツドリンクも選択肢になります。
子どもを対象とした研究では、味や糖質、塩分を含む飲料によって自発的な飲水量が増え、脱水を防ぎやすくなったことも報告されています。ただし、スポーツドリンクを日常の水代わりにする必要はありません。活動時間、発汗量、食事内容に応じて使い分けましょう。
Wilk & Bar-Or, 1996
AAP「Sports Drinks and Energy Drinks」
また、一度に極端な量を飲ませるのではなく、休憩ごとに少しずつ補給することが基本です。
6.「いつもと違う」は重要なサインです
熱中症の初期には、次のような症状がみられることがあります。
- 頭痛
- めまい、ふらつき
- 吐き気
- 足や腕のけいれん
- 強い疲労感
- 顔色が悪い
- 動きや反応が遅い
- いつもより口数が少ない
特に危険なのが、返事がおかしい、呼びかけへの反応が鈍い、まっすぐ歩けない、意識がはっきりしないといった症状です。
この場合は重い熱中症を疑い、すぐに119番へ連絡します。同時に、涼しい場所へ移動させ、衣服をゆるめ、身体を冷やしてください。
氷水に全身を浸す方法は高い冷却効果がありますが、一般的な現場で難しい場合は、身体に水をかけながら風を当てる、冷たいぬれタオルを交換する、首・わきの下・脚の付け根を冷やすなど、できる方法を組み合わせます。
意識がおかしい子どもや、吐いている子どもに、無理に飲み物を飲ませてはいけません。
症状が一度改善しても、その日の練習や試合には戻さず、保護者や医療機関と連携して経過を確認しましょう。
7.保護者の皆様ができる一番の対策は「休んでいい」と伝えること
子どもたちは、大人が思っている以上に周囲を見ています。
「みんなが頑張っているから休めない」
「途中で抜けると迷惑をかける」
「弱いと思われたくない」
そのような気持ちから、不調を隠してしまうことがあります。
だからこそ、普段から次のように伝えておくことが大切です。
頭が痛い、気持ちが悪い、いつもと違うと思ったら、すぐに教えてね。
休むことは悪いことではなく、自分と仲間を守る行動だよ。
水分補給や冷却グッズと同じくらい、体調を正直に言える雰囲気が子どもを守ります😊
ハンドボールを安全に、思い切り楽しむために
ハンドボールは、走る、投げる、跳ぶ、仲間と協力するといった、たくさんの魅力が詰まったスポーツです。
これまでのシリーズでも、プレーする楽しさや、仲間を応援する喜びをご紹介してきました。
安全対策は、子どもたちの挑戦を止めるためのものではありません。
適切に休み、水分を補給し、環境に合わせて練習内容を調整することで、子どもたちは最後まで笑顔でスポーツを楽しむことができます。
平塚ハンドボールクラブでは、ハンドボール経験の有無を問わず、小学生・中学生の選手を募集しています🤾
「初めてだけれど大丈夫かな?」というお子さまも大歓迎です。まずは見学や体験練習から、ハンドボールの楽しさを感じてみてください!
🎥今回のおすすめハンドボール動画
全国の舞台で、小学生選手が仲間と声をかけ合いながらプレーする姿を見ることができます。素早い攻守の切り替えや思い切りのよいシュートなど、小学生ハンドボールの魅力が詰まった映像です。
親子で動画を見ながら、「暑い日の大会では、どんな準備が必要かな?」と話してみるのもおすすめです✨
参考文献・資料
- Smallcombe JW, et al. Thermoregulation and dehydration in children and youth exercising in extreme heat compared with adults. Br J Sports Med. 2025.
- Notley SR, et al. Exercise Thermoregulation in Prepubertal Children: A Brief Methodological Review. Med Sci Sports Exerc. 2020.
- American Academy of Pediatrics. Climatic Heat Stress and Exercising Children and Adolescents. Pediatrics. 2011.
- Kerr ZY, et al. The Association between Mandated Preseason Heat Acclimatization Guidelines and Exertional Heat Illness. Environ Health Perspect. 2019.
- Wilk B, Bar-Or O. Effect of drink flavor and NaCl on voluntary drinking and hydration in boys exercising in the heat. J Appl Physiol. 1996.
- 日本スポーツ協会「スポーツ活動中の熱中症予防ガイドブック」
- 文部科学省「熱中症・水難事故防止関連情報」
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。症状が強い場合、意識や言動に異常がある場合、水分を摂取できない場合は、速やかに救急要請または医療機関への相談を行ってください。
