【Episode 1】|空間把握能力とは?「周りを見る力」がプレーを変える!🤾♂️
「もっと周りを見よう!」
スポーツをしている子どもに、こんな声をかけたことがある保護者の方も多いのではないでしょうか?
特にハンドボールでは、
「前が空いていたのに気づかなかった!」
「味方がフリーだったのにパスを出せなかった!」
「ディフェンスが来ていることに気づかなかった!」
という場面がよくあります。
そこで今回から3回に分けて紹介するのが、ハンドボール選手の「空間把握能力」についてです🧠✨
第1回となる今回は、
「そもそも空間把握能力とは何なのか?」
そして、
「なぜハンドボールで重要なのか?」
を研究論文をもとに解説していきます。
空間把握能力=「視野が広い」だけではありません
「空間把握能力」と聞くと、
「周りがよく見えている選手」
をイメージするかもしれません。
もちろん、それも大切です。
しかし、スポーツで必要なのは単純に視界に入っていることだけではありません。
例えばハンドボールでは、
①周囲を見る
↓
②味方・相手・スペースの位置を理解する
↓
③次に何が起こるか予測する
↓
④パス・シュート・突破などを選ぶ
↓
⑤実際に身体を動かす
という一連の流れが、ほんの短い時間の中で繰り返されています。
チームスポーツにおける意思決定について53本の研究を整理したシステマティックレビューでは、選手の意思決定には、周囲から重要な情報を拾い、その情報を実際の行動へ結びつける知覚・認知過程が関わっていることが整理されています。
【Ashford et al., 2021】
Understanding a Player’s Decision-Making Process in Team Sports: A Systematic Review of Empirical Evidence
つまり、
「見える」だけではなく、「見た情報を使って動ける」ことが重要
ということです👀
ハンドボールでは、状況が一瞬で変化します
なぜハンドボールでは、この能力が重要なのでしょうか?
大きな理由の一つが、状況変化の速さです。
例えば、自分がボールを持ったとします。
その瞬間にも、
「目の前のディフェンスが前に出てくる」
「隣のディフェンスがカバーに動く」
「味方が空いているスペースへ走る」
「ポストの選手が位置を変える」
など、コート上の状況は次々に変化していきます。
ほんの少し前には空いていたスペースが、次の瞬間には閉じていることもあります。
反対に、
相手ディフェンスが動いたことで、新しいスペースが突然生まれることもあります。
だからハンドボールでは、
「ここにパスを出す」
という答えを最初から決めておくのではなく、
「今どうなっているのか?」を見ながら答えを変える力
が必要になります。
上手な選手は「反応が速い」だけなの?
ここで興味深いハンドボールの研究があります。
エリート選手とアマチュア選手を対象に、実際のハンドボールに近い攻撃映像を見せ、その状況に対してどのようなディフェンス行動を選択するのかを調べた研究です。
研究には44名のハンドボール選手が参加しました。
その結果、エリート選手とアマチュア選手では、特定の攻撃状況における選択するディフェンス行動に違いがみられました。
一方で、単純に「エリート選手の判断時間がすべて速かった」という結果ではありませんでした。
研究者らは、競技経験によって蓄積された知識や、相手選手の動きから得られる情報の処理が、意思決定行動の違いに関係している可能性を指摘しています。
【Hinz et al., 2022】
Differences in Decision-Making Behavior Between Elite and Amateur Team-Handball Players in a Near-Game Test Situation
これは非常に面白いポイントです。
つまり上手な選手とは、
単純に「誰よりも速く反応できる選手」ではない可能性がある
ということです。
相手の身体の向き。
味方の位置。
ディフェンスとの距離。
空いているスペース。
こうした情報から、
「次に何が起こりそうなのか?」
を判断しながらプレーしていると考えられるのです🤾♂️
「もっと周りを見て!」だけでは少し足りない
子どもたちに対して、
「もっと周りを見よう!」
と伝える場面は多いと思います。
もちろん間違った声かけではありません。
しかし子どもの立場からすると、
「何を見ればいいの?」
となることもあります。
例えばハンドボールなら、
「ディフェンスはどこにいる?」
「味方はどこにいる?」
「空いている場所はどこ?」
「相手はどちらへ動こうとしている?」
など、見る対象はいくつもあります。
大切なのは、
ただ顔を上げることではなく、“プレーに必要な情報を探すこと”です。
育成年代のチームスポーツにおける意思決定について26研究をまとめたシステマティックレビューでも、競技レベルや年代による意思決定の違い、さらに意思決定能力を対象としたトレーニングについて研究されています。
【Silva et al., 2020】
Decision-Making in Youth Team-Sports Players: A Systematic Review
そのため小学生年代では、
「全部見なさい!」
ではなく、
まずは近くの相手を見る。
次に味方を見る。
そして少しずつスペースにも気づく。
というように、経験を積みながら見る情報を増やしていくことが大切だと考えられます🌱
空間把握能力は「センスのある子だけ」のものではありません
「あの子は周りがよく見えている」
「うちの子はボールしか見えていない」
そんな違いを見て、
「これは生まれつきのセンスなのかな?」
と思うこともあるかもしれません。
しかし、早い段階で「センスがある・ない」と決めてしまう必要はありません。
育成年代のチームスポーツを対象とした研究では、ゲーム形式、映像を用いた方法など、意思決定を狙ったトレーニングによって戦術的行動を改善できる可能性が報告されています。
【Silva et al., 2021】
Effects of Training Programs on Decision-Making in Youth Team Sports Players: A Systematic Review and Meta-Analysis
もちろん、研究によって方法や対象者が異なるため、
「この練習をすれば必ず空間把握能力が上がる」
とは言えません。
しかし、
見る経験。
考える経験。
判断する経験。
そして失敗して、もう一度考える経験。
こうした経験を積み重ねることには、大きな意味があります😊
ハンドボールは「考えながら動く」スポーツです🤾♂️
ハンドボールというと、
「シュートが速い!」
「ジャンプがすごい!」
「運動能力が高い!」
というイメージが強いかもしれません。
しかし実際には、それだけではありません。
味方を見て、相手を見て、空いている場所を探し、その瞬間に自分でプレーを選択する。
ハンドボールには、そんな楽しさがあります。
子どもたちにとっても、
「どこに動けばいいかな?」
「どうしたら味方を助けられるかな?」
「相手がこっちに来たら、次はどうする?」
と考えながらスポーツをする経験につながります✨
ハンドボールは身体を動かすだけでなく、
「見て・考えて・動く」ことを何度も経験できるスポーツ
なのです。
🎥 今回のおすすめ
空間把握能力を理解するには、実際の試合を見ることもおすすめです!
今回は育成年代のトップレベルからこちら👇
18歳以下のトップレベルの試合です。
見るときはシュートだけではなく、
「ボールを持っていない選手がどこへ動いているか?」
にも注目してみてください👀
ディフェンスが動く
↓
スペースができる
↓
味方がそこへ動く
というハンドボールならではの駆け引きが見つけられると思います。
■ 次回は「どうやって鍛えるの?」を解説します!
今回は、
「ハンドボールにおける空間把握能力とは何なのか?」
について紹介しました。
ポイントをまとめると、
空間把握能力とは、単純に周囲が見えることではありません。
周囲を見る。
状況を理解する。
次の動きを予測する。
プレーを選択する。
そして実際に動く。
この一連の能力が重要になります。
そして次回のEpisode 2では、いよいよ、
「では、空間把握能力はどうやって鍛えればいいの?」
という疑問に答えます🔥
2対1や3対2、少人数ゲーム、ボールを受ける前に周囲を見る習慣など、実際のハンドボール練習で使える方法を研究論文と一緒に紹介します。
ぜひ次回もご覧ください😊
🤾♂️ 平塚ハンドボールクラブでは新しい仲間を募集中!
平塚ハンドボールクラブでは、小学生を中心に、経験を問わず新しい選手を募集しています!
ハンドボールを一度もやったことがなくても大丈夫です😊
「新しいスポーツに挑戦したい!」
「走ることやボール遊びが好き!」
「何か夢中になれるものを見つけたい!」
そんなお子さまも大歓迎です✨
また、今後は中学生年代の活動も充実させていく方針です。
平塚市周辺で小学生・中学生のスポーツや習い事を探している方は、ぜひ一度ハンドボールを体験してみてください🤾♂️
📚 引用文献
Ashford et al. (2021)
Understanding a Player’s Decision-Making Process in Team Sports: A Systematic Review of Empirical Evidence
Hinz et al. (2022)
Differences in Decision-Making Behavior Between Elite and Amateur Team-Handball Players in a Near-Game Test Situation
Silva et al. (2020)
Decision-Making in Youth Team-Sports Players: A Systematic Review
Silva et al. (2021)
Effects of Training Programs on Decision-Making in Youth Team Sports Players: A Systematic Review and Meta-Analysis
