【Episode 2】|空間把握能力はどう鍛える?試合で「周りが見える選手」になる練習法🤾♂️
「もっと周りを見よう!」
と言われても、
「じゃあ、どうすれば周りを見られるようになるの?」
と思いますよね。
前回のEpisode 1では、ハンドボールにおける空間把握能力を、
見る → 状況を理解する → 予測する → 判断する → 動く
という一連の能力として紹介しました。
▶ Episode 1はこちら
https://www.hiratuka-handball.com/20260930930/
第2弾となる今回は、いよいよ実践編です🔥
ハンドボール選手の空間把握能力をどのような練習で伸ばしていけばいいのか?
研究論文をもとに考えていきます。
① まずおすすめしたいのが「2対1・3対2」
空間把握能力を鍛えると考えたとき、非常に使いやすいのが、
2対1や3対2のような数的優位のゲーム
です。
例えば2対1では、
「ディフェンスが自分に来た」
→ 味方が空く
「ディフェンスが味方を守った」
→ 自分が突破できる
というように、相手の行動によって“答え”が変わります。
ここが重要です。
決められたコースを走るだけでは、
「右に走る」
という動作を覚えることはできます。
しかし2対1では、
相手を見る
↓
スペースを見る
↓
味方を見る
↓
突破かパスかを決める
という処理が必要になります。
ハンドボールのスモールサイドゲームについて20研究を整理したシステマティックレビューでは、人数、コートサイズ、ルールなどの条件によって、選手の技術・戦術的行動や身体的要求が変化することが整理されています。
【2023年・ハンドボールのスモールサイドゲームに関するシステマティックレビュー】
つまり指導者側が、
「何人で行うか」「どのくらいの広さにするか」「どんなルールにするか」
を変えることで、選手が見る情報や判断する場面そのものを変えることができるわけです。
② 3対3・4対4の「少人数ゲーム」も活用する
次におすすめしたいのが、
3対3や4対4
です🤾♂️
6対6になると、初心者の子どもにとっては情報量が非常に多くなります。
味方も多い。
相手も多い。
どこを見ればいいのか分からない。
その結果、
「とりあえずボールを見る」
という状態になってしまうことがあります。
そこで人数を減らします。
すると、
「自分の相手」
「隣の味方」
「空いているスペース」
などが比較的分かりやすくなります。
18歳未満のチームスポーツ選手を対象としたスモールサイドゲーム研究のメタ分析では、対照条件と比較して、技術的実行に有益な効果(ES=0.59)が報告されています。
ただし、このレビューに採用された6研究では、戦術行動を長期的に評価した研究がなかったため、「少人数ゲームをすれば必ず空間把握能力が向上する」と断定することはできません。
【2021年・育成年代のスモールサイドゲームに関するシステマティックレビュー&メタ分析】
ここは大切なポイントです。
科学的には、
❌「3対3をすれば空間把握能力が必ず伸びる」
ではなく、
⭕「試合に近い状況の中で、見る・判断する機会を作りやすい練習方法の一つ」
と考えるのが適切です。
③ 「ボールをもらう前に見る」を習慣にする👀
空間把握能力を鍛えるうえで、ぜひ意識してほしいことがあります。
それが、
ボールを受ける“前”に見ること
です。
例えば、
パスが自分に来る
↓
キャッチする
↓
そこから周りを見る
では、ディフェンスがすでに近づいているかもしれません。
そこで、
ボールが来る前に一度周囲を見る
という習慣を作ります。
「ディフェンスはどこ?」
「味方はどこ?」
「前にスペースはある?」
これをボールが来る前に確認します。
サッカーのトップ選手27人、9,574回のボール保持場面を分析した研究では、選手がボールを受ける前などに周囲を確認するスキャニング・アクションが調査され、プレー状況やその後のパフォーマンスとの関連が報告されています。
【エビデンス③:2020年・トップレベル選手のスキャニング研究】
これはサッカーの研究なので、
「ハンドボールでも全く同じ効果が出る」
とは言えません。
しかし、味方・相手・スペースが絶えず変化するという共通点を考えると、
「ボールを受ける前から情報を集める」
という考え方はハンドボールにも応用しやすいでしょう。
④ 「周りを見て!」ではなく「何が見えた?」と聞く
ここで指導者や保護者の声かけも少し変えてみます😊
例えば、
❌「もっと周りを見なさい!」
ではなく、
⭕「パスをもらう前、ディフェンスはどこにいた?」
⭕「どこが空いていた?」
⭕「他にパスできる選手はいた?」
と聞いてみます。
すると子どもは、
「次はそこを見てみよう」
と考え始めます。
大切なのは、顔を左右に動かすことそのものではありません。
必要な情報を探すこと
です。
空間把握能力を育てるのであれば、
「見た?」
より、
「何が見えた?」
の方が重要なのです👀✨
⑤ 動画を止めて「次はどうなる?」を考える
家庭でもできる方法があります。
それが、
映像を途中で止めるトレーニング
です。
ハンドボールの試合映像を見ながら、攻撃の途中で一時停止します。
そこで、
「次は誰にパスが出ると思う?」
「どこにスペースがある?」
「自分ならどうする?」
と考えます。
映像を用いた予測・意思決定トレーニングを検討したレビューでは、サッカーを対象とした10研究のうち8研究で、トレーニング後に予測または意思決定に関する改善が報告されています。
【2022年・映像を用いた意思決定トレーニングのシステマティックレビュー】
さらに、チームスポーツの知覚・認知トレーニング22研究を統合した2024年のメタ分析でも、予測・意思決定への効果が確認されています。
ただし重要なのは、実際の競技への転移効果(ES=0.65)は、実験室内の課題への効果(ES=1.51)より小さかったことです。
【2024年・知覚認知トレーニングのシステマティックレビュー&メタ分析】
つまり、
動画だけ見ていれば上手になるわけではありません。
動画で考える
↓
体育館で試す
↓
ゲームで判断する
ここまでつなげることが大切です。
一番大切なのは「見る→判断する→動く」を切り離さないこと
ライトが光った場所をタッチする。
画面上の物体を追いかける。
反応速度を競う。
こうしたトレーニングにも目的はあります。
しかし、ハンドボールの空間把握能力を伸ばすのであれば、
実際のハンドボールに近い状況で練習すること
も大切です。
2026年に発表されたハンドボールのスキル学習に関する論文でも、選手が競技環境の情報を知覚し、それに合わせて動きを適応させるという考え方が整理されています。
【2026年・ハンドボールのスキル学習に関する論文】
つまり、
相手がいる。
味方がいる。
ボールがある。
スペースが変わる。
そして、自分で決める。
そんな練習が重要なのです🤾♂️
小学生なら「全部見る」必要はありません🌱
特に初心者や小学生の場合、
「コート全体を見なさい!」
と言われても難しいものです。
まずは、
目の前のディフェンスを見る。
次に、
近くの味方を見る。
さらに慣れてきたら、
空いているスペースを見る。
それで十分です😊
2対1
↓
3対2
↓
3対3
↓
4対4
↓
実際のゲーム
というように、少しずつ情報量を増やす方法も考えられます。
大切なのは、
「正解できたか」だけではなく、「見て、考えたか」
です。
失敗しても、
「今どこを見ていた?」
「他には何が見えそうだった?」
と振り返れば、その失敗も立派な練習になります✨
🎥 今回のおすすめ動画|実際の「判断力トレーニング」を見てみよう!
今回紹介するのは、日本ハンドボール協会公式の判断力養成トレーニング動画です🇯🇵🤾♂️
2026年3月に公開された指導者向け映像では、
・判断力を養うウォーミングアップ
・認知・反応ドリル
・駆け引きを伴うシュートトレーニング
など、ジュニア年代からトップレベルまでつながる「自ら考えて判断する」トレーニングが紹介されています。
今回のテーマと非常に相性の良い内容ですので、保護者の方もぜひ見てみてください😊
「ハンドボールって、こんなに考えながらプレーするんだ!」
ということが分かると思います。
まとめ|空間把握能力は「ゲームの中」で育てよう!
今回紹介した内容をまとめると、
① 2対1・3対2で相手を見て判断する
② 3対3・4対4で見る情報を整理する
③ ボールを受ける前に周囲を見る
④「周りを見て」ではなく「何が見えた?」と問いかける
⑤ 映像で予測し、最後は実際のプレーにつなげる
という方法が考えられます。
空間把握能力は、単純に「目を鍛える」だけではありません。
見る。
考える。
選ぶ。
動く。
この経験を何度も繰り返すことが重要です🤾♂️✨
そして次回Episode 3では、
「練習した空間把握能力を、どうすれば試合で使えるようになるのか?」
について解説します。
指導者・保護者の声かけや、
「答えを教えすぎない指導」
についても研究をもとに考えていきます😊
🤾♂️ 平塚ハンドボールクラブでは新しい仲間を募集中!
平塚ハンドボールクラブでは、小学生を中心に、経験を問わず新しい選手を募集しています!
「ハンドボールをやったことがない」
「運動が得意か分からない」
というお子さまも大歓迎です😊
ハンドボールは、
走る・跳ぶ・投げるだけではなく、
周りを見て、自分で考え、仲間と協力しながらプレーするスポーツです。
これから新しいスポーツに挑戦してみたい小学生・中学生の皆さんも、ぜひ一度ハンドボールを体験してみてください✨
今後は中学生年代の活動もさらに充実させていく方針です。
一緒にハンドボールを楽しむ新しい仲間をお待ちしています🤾♀️🤾♂️
📚 Episode 2で引用した主な研究
【エビデンス①】2023年
Effects of small-sided games on technical-tactical actions and physical performance in handball: a systematic review
【エビデンス②】2021年
Effects of Small-Sided Game Interventions on the Technical Execution and Tactical Behaviors of Young and Youth Team Sports Players: A Systematic Review and Meta-Analysis
【エビデンス③】2020年
Scanning, Contextual Factors, and Association With Performance in English Premier League Footballers
【エビデンス④】2022年
Effects of video-based training on anticipation and decision-making in football players: A systematic review
【エビデンス⑤】2024年
Effects of Perceptual-Cognitive Training on Anticipation and Decision-Making Skills in Team Sports: A Systematic Review and Meta-Analysis
【エビデンス⑥】2026年
Performing is adapting: an ecological dynamics framework for skill learning in development in handball
