試合前に緊張する子どもは大丈夫?教育心理学で考える本番に強い心の育て方
小学生・中学生のスポーツでよくある「試合前の緊張」。本番に弱いのではなく、緊張は成長のサインかもしれません。教育心理学の研究をもとに、保護者が知っておきたいサポート方法を紹介します!
「試合になると緊張してしまう」
「練習ではできるのに、本番になると動きが固くなる」
「失敗を怖がって、思い切ったプレーができない」
スポーツをしているお子さまを見ていると、保護者の方がこのように感じる場面は少なくないと思います。
特にハンドボールは、走る・投げる・跳ぶ・判断する・仲間と連携する、といった要素が一瞬で求められるスポーツです。だからこそ、試合前や試合中に緊張するのは、とても自然なことです😊
今回のテーマは、教育心理学の視点から考える「子どもの本番前の緊張との向き合い方」です。
結論から言うと、緊張する子は「メンタルが弱い子」ではありません。むしろ、緊張は「頑張りたい」「うまくやりたい」「大切に感じている」という心の表れでもあります。
大切なのは、緊張をなくすことではなく、緊張していてもプレーできる準備をつくることです。
緊張は悪者ではありません
試合前に心臓がドキドキする。手に汗をかく。体が少し重く感じる。
こうした反応は、子どもが「これから大事なことが始まる」と感じているサインです。
心理学では、こうした体の反応を「不安」と捉えるか、「準備が整ってきたサイン」と捉えるかによって、その後のパフォーマンスが変わる可能性が示されています。たとえば、ストレスによる身体の高まりを「自分を助ける反応」と捉え直すことで、注意やパフォーマンスに良い影響が出る可能性があることが報告されています。(Improving Acute Stress Responses The Power of Reappraisal)
また、試合や発表などの本番前の不安を「ワクワクしている状態」と捉え直す研究では、「落ち着こう」とするよりも、不安を前向きな興奮として再評価する方が、パフォーマンスに良い影響を与える可能性が示されています。(Get Excited: Reappraising Pre-Performance Anxiety as Excitement:Harvard Business School)
つまり、緊張そのものが問題なのではありません。
問題は、子どもが緊張したときに、
「緊張しているからダメだ」
「失敗したらどうしよう」
「自分は本番に弱いんだ」
と感じてしまうことです。
緊張を「ダメなもの」と思うほど、体の反応がさらに気になり、いつもの動きが出にくくなってしまいます。
本番で力を出せない理由は「頭の中が不安でいっぱいになる」から
教育心理学の研究では、テスト前の不安についても多くの知見があります。
ある研究では、テスト前の不安や心配事が、問題を解くために必要な「ワーキングメモリ」を圧迫する可能性が説明されています。ワーキングメモリとは、今やるべきことを頭の中で一時的に保持し、処理する力のことです。(Writing about worries eases anxiety and improves test performance:シカゴ大学)
これはスポーツにも通じます。
ハンドボールでいえば、
「次はどこに走る?」
「パスを出す?シュートに行く?」
「相手ディフェンスはどこにいる?」
「味方はどこにいる?」
こうした判断を一瞬で行う必要があります。
しかし、頭の中が「失敗したらどうしよう」「怒られたらどうしよう」「ミスしたくない」でいっぱいになると、プレーに必要な判断の余裕が減ってしまいます。
だからこそ、試合前には「不安をゼロにする」のではなく、不安を整理して、プレーに集中できる状態をつくることが大切です。
研究から考える、試合前にできる簡単な方法
テスト不安の研究では、本番前に自分の不安を書き出す「表出的筆記」が、パフォーマンス改善につながる可能性が示されています。ある研究では、重要なテストの直前に10分間、自分の不安を書き出した生徒の成績が改善したと報告されています。(Writing about testing worries boosts exam performance in the classroom)
もちろん、これはテスト場面の研究なので、ハンドボールの試合にそのまま完全に当てはまるとは言い切れません。
ただし、共通しているのは、どちらも「本番前に評価される場面」であるということです。
そのため、ハンドボールの試合前にも、次のような方法は取り入れやすいと思います。
1分でできる「緊張メモ」📝
試合前や練習試合の日に、紙やスマホのメモに次の3つを書いてみます。
- 今、何が不安か
- 今日、自分がやることは何か
- 結果に関係なく、挑戦したいプレーは何か
たとえば、
「シュートを外すのが不安」
「でも、今日は1回は思い切ってシュートに行く」
「失敗しても、まずはゴールを見る」
このように書くだけでも、頭の中でぐるぐるしていた不安が整理されやすくなります。
ポイントは、完璧な言葉で書く必要はないということです。
子ども自身の言葉で、短く書ければ十分です😊
保護者ができることは「緊張を消すこと」ではなく「緊張しても大丈夫な空気」をつくること
保護者の方としては、子どもが緊張していると、つい安心させたくなると思います。
もちろん、それ自体は悪いことではありません。
ただ、子どもにとって大切なのは、
「緊張してはいけない」ではなく、
「緊張しても、自分はここにいて大丈夫」と思えることです。
若年アスリートに関する研究では、保護者からのプレッシャーを強く感じている選手ほど、スポーツへの楽しさが下がったり、やる気を失いやすかったりする傾向が報告されています。一方で、適切な保護者の関わりは、子どものスポーツの楽しさや前向きな参加につながるとされています。(The role of parents in the motivation of young athletes: a systematic review)
つまり、保護者の関わりはとても大切です。
大切なのは、結果を急がせることではなく、子どもが「挑戦していい」と感じられる環境をつくることです。
試合後も、いきなり結果やミスの話をするより、
「今日はどんな場面でドキドキした?」
「その中で、挑戦できたことはあった?」
「次に同じ場面が来たら、何を試してみたい?」
というように、子ども自身が経験を整理できる時間をつくることが大切です。
ハンドボールは「緊張との付き合い方」を学べるスポーツです
ハンドボールでは、ミスが起きます。
パスミスもあります。
シュートを外すこともあります。
相手に抜かれることもあります。
思った通りにプレーできない日もあります。
でも、だからこそハンドボールは、子どもたちにとって大切な学びの場になります。
失敗しても、次のプレーが来る。
緊張しても、仲間がいる。
うまくいかなくても、また練習できる。
この経験の積み重ねが、子どもたちの「本番に向かう力」を育てていきます✨
本番に強い子とは、緊張しない子ではありません。
緊張しても、少しずつ自分を整えられる子。
失敗しても、また挑戦できる子。
仲間と一緒に、前を向ける子。
そうした力は、スポーツを通じて育てることができます。
ご家庭でできる3つのサポート
最後に、保護者の方がご家庭でできるサポートを3つにまとめます。
1. 試合前は「結果」より「今日やること」を1つに絞る
「勝とうね」「点を取ろうね」も前向きな言葉ですが、子どもによってはプレッシャーになることもあります。
試合前は、結果よりも行動目標がおすすめです。
「今日は1回、思い切ってシュートを打ってみよう」
「ディフェンスで1回、相手の前に入ってみよう」
「まずは大きな声を出してみよう」
このように、子どもが自分でコントロールできる目標にすると、本番でも動きやすくなります。
2. 緊張を「悪いもの」と決めつけない
緊張している子に対して、無理に「緊張しないで」と言うよりも、
「それだけ頑張りたいってことだね」
「体が試合の準備をしているんだね」
「ドキドキしても大丈夫だよ」
というように、緊張を自然な反応として受け止めることが大切です。
3. 試合後は、できたことを一緒に見つける
試合後は、子ども自身もミスを覚えていることが多いです。
だからこそ、保護者の方は「できたこと」を一緒に見つけてあげる存在でいてほしいと思います。
「最後まで走っていたね」
「失敗した後も、次のプレーに戻っていたね」
「前よりも声が出ていたね」
こうした小さな成長の確認が、次の挑戦につながります。
まとめ
試合前に緊張することは、悪いことではありません。
それは、子どもが本気で頑張ろうとしているサインです。
大切なのは、緊張をなくすことではなく、緊張しても挑戦できる経験を積んでいくことです。
平塚ハンドボールクラブでは、小学生から中学生まで、経験を問わず新しい仲間を募集しています。初めての方も基礎から丁寧に始められる環境があり、楽しく体を動かしながら新しい友達をつくることができます。
ハンドボールを通じて、体だけでなく、心も少しずつ強くなっていく。
そんな成長のきっかけを、ぜひ一緒につくっていきましょう😊
