体を動かすと頭も育つ?運動と学力の関係を科学で解説
「スポーツを始めたら、勉強の時間が減ってしまうのでは?」――そんな心配をお持ちの保護者の方は少なくありません。実は、子どもの運動と集中力・学力の関係は、世界中で研究が進んでいるテーマです。今回は信頼性の高い研究をもとに、わかっていること・まだわかっていないことを整理してお伝えします📚
こんにちは!平塚ハンドボールクラブです😊
体験に来てくださる保護者の方から、こんな声をいただくことがあります。
「習い事を増やしたら、宿題の時間が足りなくなりそうで…」 「運動は好きだけど、勉強との両立が心配」
お子さんの将来を考えるからこその、もっともな心配ですよね。 そこで今回は「運動すると、勉強にも良い影響があるの?」という疑問について、研究論文をもとに考えてみます。
🔬 研究① 運動と学力には「プラスの関係」がある
アメリカスポーツ医学会(ACSM)は2016年、5〜13歳の子どもを対象にした研究をまとめた「公式見解」を発表しました【出典1】。
この報告では、1990年から2014年までに発表された研究が、
- 認知機能(考える力・記憶など)や脳の働きに関する研究:64本
- 学力テストや集中力・注意力に関する研究:73本
の2つのグループに分けて検討されています【出典1】。
その結論は、 ✅ 運動量や体力と、認知機能・学力の間にはプラスの関係が見られる ✅ 運動の時間を増やしても、学力が下がるという証拠は見つからなかった というものでした【出典1】。
つまり「運動すると勉強がおろそかになる」という心配は、研究の上では支持されていない、ということです。
ただし報告自体も、研究によって結果にばらつきがあること、どんな運動を・どれくらい・いつ行うのが良いかはまだはっきりしていないことを、限界として挙げています【出典1】。
🔬 研究② 9か月の放課後運動で「集中力」と「切り替える力」が伸びた
もう少し踏み込んだ研究もご紹介します。 アメリカの小児科学の専門誌『Pediatrics』に2014年に掲載された研究です【出典2】。
この研究では、7〜9歳の子ども221人を、
- 放課後に9か月間、運動プログラムに参加するグループ
- 参加しない(あとで参加する)グループ
にくじ引きのように無作為に分けて比べました【出典2】。無作為に分けることで、「もともと運動好きな子が勉強もできた」という偏りを減らせる、信頼性の高い方法です。
結果、運動プログラムに参加したグループは、体力が伸びただけでなく、
✅ 気が散るものを抑えて集中する力 ✅ やることを素早く切り替える力
がより大きく向上しました【出典2】。さらに、プログラムへの出席が多い子ほど改善が大きかったことも報告されています【出典2】。
このような「集中する」「切り替える」「覚えておく」といった力は、まとめて実行機能と呼ばれ、勉強にも日常生活にも欠かせない土台の力です。
一方で、これは1つの研究の結果であり、すべての子に同じ効果が出るとは限りません。
🔬 研究③ 専門家の結論は「算数への効果は強い証拠あり、ほかはこれから」
最後に、研究を厳しく見直した報告も紹介します。 2019年に『British Journal of Sports Medicine』に掲載された、研究の総まとめと国際的な専門家パネルの提言を組み合わせた論文です【出典3】。
この論文では、子どもへの運動プログラムの研究58本を集め、研究の質を1本ずつ評価しました。その結果、質が高いと評価された研究は11本(約19%)にとどまりました【出典3】。
そのうえで、 ✅ 運動が算数の成績に良い影響を与えることには強い証拠がある ✅ そのほかの学力や認知機能については、質の高い研究がまだ足りない と結論づけています【出典3】。
「運動すれば必ず頭が良くなる」とまでは言えません。でも、少なくとも運動が勉強の足を引っ張ることはなく、プラスに働く可能性がある――これが、今の研究から言えることです。
🤾♂️ ハンドボールは「考えながら動く」スポーツ
ここからは、研究結果をふまえた私たちの考えです。
ハンドボールは、
- 攻撃と守備が一瞬で入れ替わる(切り替える力)
- 味方・相手・ボール・ゴールを同時に見る(集中する力)
- 「パスか、シュートか、ドリブルか」を一瞬で決める(判断する力)
といった場面の連続です。 研究②で伸びたとされる「集中」や「切り替え」と、よく似た力を使うスポーツだといえます。
※ハンドボールそのものが学力を上げると直接確かめた研究ではありません。あくまで「使う力が近い」というお話です。
🎥 動画で見てみよう
📚 ご家庭で意識したいこと
研究からわかったことを、ご家庭向けにまとめると次のようになります。
- 運動と勉強を「どちらか」で考えなくて大丈夫:運動を増やしても学力が下がる証拠はありません【出典1】。
- 続けることが大切:研究②では、出席が多い子ほど効果が大きくなっていました【出典2】。
- 「楽しい」が続ける力になる:無理に続けるより、子どもが「また行きたい」と思える環境を選ぶことが、結果的に長続きにつながります。
✅ まとめ
- 運動と学力・集中力にはプラスの関係があり、運動で学力が下がる証拠はない【出典1】
- 9か月の運動プログラムで、集中力・切り替える力が伸びたという研究がある【出典2】
- ただし効果の大きさには個人差があり、研究もまだ途中【出典3】
「体を動かす時間」は、お子さんの「考える力」を育てる時間にもなるかもしれません😊
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参考文献
- 【出典1】Physical Activity, Fitness, Cognitive Function, and Academic Achievement in Children: A Systematic Review. Medicine & Science in Sports & Exercise. 2016;48(6):1197–1222.(PubMed: https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/27182986/ )
- 【出典2】Effects of the FITKids Randomized Controlled Trial on Executive Control and Brain Function. Pediatrics. 2014;134(4). doi:10.1542/peds.2013-3219(https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC4179093/ )
- 【出典3】Effects of physical activity interventions on cognitive and academic performance in children and adolescents: a novel combination of a systematic review and recommendations from an expert panel. British Journal of Sports Medicine. 2019;53(10):640–647. doi:10.1136/bjsports-2017-098136
